恋愛ファンタジー長編.
「魔術学院マイナーデ」
「サリナ!」
その名前が,いつでも少年を走らせる.
「……私なんかで役に立てるなら,私,なんでもするよ.」
好きだから,側に居たいから.
魔術大国の異名を持つ王国の,魔法を学ぶ学院で.
「殿下の代わりに,あなたを止めに参りました.」
案の定,薄水色の髪の青年が淡い微笑を浮かべながら立っていた.
「後でたっぷりと説教してやるからな!」
イスカの操る幻獣が真正面から,ぶつかりにゆく.
少年と少女は,出会う.
「君たち二人を守るのに,これほどの良策は無いだろう.」
老人はこともなげに,にっこりと微笑んだ.
「あなただけが私の光,いつもあなたのことを想っていたわ.」
暗い閉ざされた部屋の中で.
それは魔法の力.
万能ではない,満ち溢れているわけでもない.
「捜索は続ける.」
誰の意見にも耳を貸さない父親に,青年はむっとする.
「……穢わらしい!」
イリーナは金の髪の少年の頬をぶった.
けれど,この手に掴んでみせる.
「やっと,手に入れた.」
少女の髪に手を入れると,くせっ毛のためにすぐに絡まる.
「分かっているけど,聞いているのよ.」
二人だけのなぞなぞの言葉のように,笑いあって…….
ずっと一緒に居よう.
魔法の呪文を正しく唱えて,きっと願いは叶うはず.
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